見るからに人のよさそうな風体のAさんの話
物腰柔らかく、テナント対応が良いとオーナーからも評価されていたAさん。
その柔和な顔と裏腹に辛く厳しい過去がおありでした。
Aさん、前職は中小企業の管理職だったのですが、その会社が典型的な同族会社。我がまま副社長に振り回されて相当ご苦労されたそう。採用面接、社員旅行の手配、得意先の接待等など様々な事を担当して、その都度無理難題を言われていたんだとか。
そのうちストレスのせいで心臓を悪くしてしまい、それが起因として肺水腫になって入院したこともあったそうな。肺水腫は肺に水が溜まる疾患で、息が吸えなくなり、陸に居ながらおぼれているような恐怖があるそうです。
結局心身ともに限界に達したAさんは会社を辞め、家と家族を失うことになります。
家族も住居も金も失った齢50半ばの男性。
それから、失業給付を受けながら職業訓練校のビルメン科に進んだそうです。なんとか、アパートを借りて再起をかけたリスタートですが、その時のAさんの精神状態は私には想像できません。
その後無事に私のいた会社に入社することになりまが、今度は入社数日で肺気腫が再発し1週間の入院という憂き目に・・息が吸えず2階のアパートの階段が登れなかったので、自ら救急車を呼んだそうですが、さすがにその時は死を覚悟したそうです。
そんな九死に一生を得た感じのAさんですが、復帰直後にスーパービルメンさんから、
「入社早々、病気になんかなりやがって」
というサイコパスな言葉をかけられたそうです。
そんな状況でも、私が移動して来たころには既に仕事にも慣れ、新しい人生が軌道に乗っていたようでした。
宿直時、一通り業務が終わった後のマッタリタイムで、美味しそうにタバコを吸いながら(肺気腫にもかかわらず)
「いやぁ、本当に今は楽でいいねえ」
と心の底から煙と一緒にその言葉を吐き出していました。
50過ぎて、ストレスのない仕事、それも異業種に転職するのはかなり厳しいものがあります。
しかし、ビルメンはそのような方の受け皿としてうまく機能している側面があります。
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