びっくりビルメンマン その9

以前の会社で私と同期だったAさんの話。

Aさんは私より7~8歳年上でしたが、非常に謙虚な方で

私を含め誰に対しても敬語で話されていました。

一見グルジア人かと見紛う風体と裏腹に性格は至極繊細。

電話対応が苦手なようで、電話が鳴ると、常につばを飲み込み

意を決して受話器を取っていました。

・・しかし毎回

「も、も、もしもし、あ、あ、あ・・あがうぐ・・」

一緒に働いた2年間、終ぞ電話対応に慣れることがありませんでした。

気持ちは分かります。

だからこそビルメンに流れ着いた訳です。

程度の差こそあれ私も同じ系統です。

そんなAさんですが、大変な努力家で色々な資格をお持ちでした。

事務系の高難易度資格も所持していたそうな。

仕事の面でも非常に真面目で、見聞きした事は全てメモ帳に書きとめていました。

どんな些細な事でも書き込むので、作業着の

上下全てのポケットがメモ帳で一杯。

半年もすると結構膨大な量になっていましたので、私は心の中で

ビルメン辞典でも作るのかと思ったりしていました(笑)。

しかし、作業ズボンの太腿についているポケットにも分厚いメモ帳を

突っ込んでいるので、点検時など配管などに引っ掛けて、よく作業着を破っていました。

いつだったか、何故かズボンの内側が 股ぐらからくるぶしくらいまでパックリ裂けて

日常点検から帰還して来たことがありました。

巨漢のおじさんが汗だくでズボンの内側がパックリ裂けて焦り顔でやってくる訳です。

股ぐらから見え隠れするパ〇ティを見て思わず私は

「だ、誰かに乱暴されたんですか?」

と、聞いてしまいました(笑)。

Aさんも私と同じく、全くの素人でビルメン業界に飛び込んできたのですが、

私と違い職業訓練校を経ていないので、仕事に慣れるのにとにかく苦労されて

いました。

入社して半年ほど経過したころの話です。

同じ安定器(蛍光灯の部品)を3つ交換する仕事がありました。

Aさん、何故か全くやったことが無いとのと。

「取り敢えず今回は見ていてください」

と言って私が作業を行いました。

- 一つ目の安定器交換 -

私:「すいません、電動ドライバーください。」

Aさん:「あ、はい」

私:「すいません、安定器ください」

Aさん:「あ、はい」

私:「すいません、蛍光管ください」

Aさん:「あ、はい」

・・・以下略

- 二つ目の安定器交換 -

私:「すいません、電動ドライバーください。」

Aさん:「あ、はい」

私:「すいません、安定器ください」

Aさん:「あ、はい」

私:「すいません、蛍光管ください」

Aさん:「あ、はい」

・・・以下略

- 三つ目の安定器交換 -

私:「すいません、電動ドライバーください。」

Aさん:「あ、はい」

私:「すいません、安定器ください」

Aさん:「あ、はい」

私:「・・・」

さすがに三回目で少しキレました。

三回とも、グルジア人風のおじさんが

少女のように胸に蛍光管を抱いて

じーっと私の作業を見つめているだけ。

確かに私は「見ていてください」とは言いましたが・・

一事が万事そんな感じなので、スーパービルメンさんの逆鱗に触れるのは

火を見るよりも明らかなので、私が異動した後にパワハラのターゲットに・・

暫くして再会した時に、えらく痩せていて驚きましたが

実は、後から聞いた話では瘦せた原因は責任者からのパワハラより

同僚のびっくりビルメンマンからの陰湿ないじめが主だったとか・・

正に、弱いものが弱いものを叩く構図でございます。

幸いにして、会社がパワハラ対策に本腰で取り組みだしたこともあり

無事、Aさんの願いが叶い、別現場へと異動動となりました。

ビルメンには仕事に全く興味がないダメ人間タイプの輩が多くいますが

真面目だけど不器用といった御仁も結構いらっしゃいます。

ビルメンはセイフティネットです。

世の中には我々社会不適合者の受け皿が必要なのです。

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