ビルメンは楽な仕事だと一般的には認識されています。
当ブログでもそのように表現しています。
しかし一方で、命に係わる危険要素が多分にある職業、と言う側面があります。
待機時間が長く決まった仕事をこなすことが多いので、
比較的に楽であることは確かですが、日常的に行う点検や機器の運転には
注意を要する作業が多く含まれていることも事実です。
今回は、危険要素の一つ”電気”について書きたいと思います。
電流
低圧でも死ぬ危険がある電気。
大なり小なり誰でも、一度は感電を経験したことがあると思いますが(ないかな?)
大体20mAの電流が体に流れると、身体にとってかなりヤバい状況になります。
m(ミリ)は1/1000です。
オームの法則により電圧、電流、抵抗の関係式は
E=IR。
電圧Eが一定なら、抵抗Rが低ければ電流Iが大きくなります。
身体が水にぬれるなどして抵抗値が低くなると
大きな電流が流れます。
勿論電圧が高ければ抵抗値が高くても大きな電流が流れます。
電気に疎い人は電圧と電流何が違うの?と思われるでしょう。
人体に影響を与えるのは電流です。
電圧が高いと結果的に電流値が高くなるので、高電圧は危険と言えるわけです。
ジュール熱
感電した際の体に流れる熱エネルギーQは
Q=RI2t となるので
電流の2乗に比例します。
式に電圧(V)が含まれていないことから分かるように電流(I)に依存します。
Q(熱量)が大きければ、受けるダメージも大きくなります。
2倍の電流が流れれば4倍の、10倍なら
100倍の熱エネルギーを受けることになります。
中々イメージできないかもしれませんが、
2乗に比例はかなりヤバいという
認識だけは持っておいた方が良いでしょう。
体内に高電流が流れた場合、内部組織が焼損します。
要は火傷ですが、身体の内部が酷い火傷を負った場合、
組織がどんどん壊死していって、治療が困難になるらしいです。
職業訓練校にいた時に、講師の方が高圧(特高)に感電してしまった
同僚の事例を挙げていましたが、それはもう悲惨な状況だったそうです。
感電して、ある程度以上の電流が流れると身体の自由が利かなくなります。
低周波治療器を使ったことがある人は分かると思いますが、
乾電池で動く治療器でさえ、施術部位の動きの自由を奪います。
また、熱量は Q=RI2t で分かるように時間(t)にも比例します。
感電したと認識していても、その手を放すことが出来なくなり
時間だけが過ぎ、身体が焼かれていきます。(´;ω;`)
交流の危険性
交流の場合、熱量と同じく危険なのは、電気が心臓を通過した場合です。
流れる電流が低くても、交流の場合は、心臓の脈動(ビート)に影響を与え
心臓が麻痺して止まってしまう恐れがあります。
0.1 mAでも心室細動を起こす危険があるそうです。
直流ならビリっと来る程度でも、交流の場合は心臓のパルス信号に影響を与えるので
心臓麻痺をおこし、死に至る訳です。((((;゚Д゚))))
高圧
さすがに高圧電気に感電した事例は仕事上で聞いたことはないのですが、
保安協会の人から事故事例として、電工の職人さんが低圧のテスターを
高圧受電部に当てようとして感電死してしまった事例を聞いたことがあります。
(低圧しか扱っていない職人さんには、高圧を理解していない人が
稀にいるそうです)
高圧の場合は電圧にもよりますが、数十センチ離れていても、絶縁破壊をおこして
感電する恐れがあります。
先の訓練校の先生のケースでも、直に触れていないが特別高圧設備で
絶縁距離内に入ってしまい、感電したそうです。
電気は目に見えないので、特に高圧設備は絶縁破壊距離を十分に理解して
行動しなければなりません。
危険な同僚
びっくりビルメンマンその4の先輩の話ですが、
400Vの動力機器の点検時に感電したことがあったそうです。
左手で金属柱を握った状態で、右手が充電部に触れてしまったとか。
Aさん:「いやー、膝からガクッと落ちたよ(笑)」
と、事もなげに話していましたが、その事実を上司に報告したり
病院に行ったりすることもなかったそう。
Aさん:「会社に報告したら、首になっちゃうよ(笑)」
とおっしゃっていました。
給湯設備点検時に濡れた手袋のまま電流測定を行おうとしたことがあり
注意したこともあります。
一番のリスクは、こういう人と一緒に作業することだと思い知りました。
まとめ
電気は目に見えないので本当に怖いです。
音や熱などで警戒する要素があれば良いのですが、電気の場合は
高圧でも基本的に充電部が熱や音を発することはありません。
事故事例で挙げた特高に感電した方は、大学院出のとても優秀な人だったそうです。
そんな優秀な人でも一瞬の油断で事故を起こしてしまうのです。
ビルメンは日次、月次、年次と電気設備点検を数多く行いますので、電気に接する
機会が多いため事故に会う確率は、他の仕事より必然的に高くなります。
しかし、決められた基準、ルールに従っていれば基本的に事故に会う事はありません。
最低限の電気知識の習得と法令順守を徹底していれば、必要以上に恐れることはありませんが
慣れや慢心は注意したいものです。
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