はじめに
前の投稿で外調機の重要性を書きましたが、
気になる事があったので少し補足をしたいと思います。
外調機の故障
私が以前勤めていたビルでは、外調機周りの不具合がとても多かった記憶があります。
加湿エレメント、蒸気コイル、モーター、ダクトなど破損した部位は
枚挙に暇がありませんでした。
直接外気に触れる設備である為か、その他の機器に比べ劣化が激しい印象です。
その中でもダンパーの開閉不良という、コロナ下では大問題に発展しかねない
事象が数回ありました。
何が問題かと言うとこのダンパー、閉じてしまうと外気が供給されなくなります。
ダンパー
ダンパーとはダクトの風量を調整する羽根の事ですが、外調機の場合は
風量の調整ではなく、空調が停止しているときに外気が入り込まない
ように羽根を閉じてダクトに蓋をする役割をしています。
外調機の発停に応じて開閉を行いますが、起動時にダンパーが開かないと
外気を各AHUに送れなくなり、極端な例ではそのビル全体が換気能力を
失うことになります。
電流値低下
「俺がこのビルに来た時に、外調機のダンパーが落ちて(閉まって)いたんだよ」
と、スーパービルメンさんに良く聞かされていました。
聞くところによると、私が勤務していたビルではスーパービルメンさんが来るまで、
外調機のダンパーが閉まりっぱなしで、誰も気付かなかったんだとか。
ベルトが外れたとか、蒸気が漏れたとか大抵の故障の場合、異音や異臭、
警告音などですぐに発見することが出来ますが、ダンパーはダクト内部
に設置されているため目視が出来ず、異音もしない為発見することが
困難です。
そこで、スーパービルメンさんに質問しました。
私:「なんでダンパーが閉まっていると分かったんです?」
サイコパス気質職人気質のスーパービルメンさんでしたが
あっさり答えを教えてくれました。
スーパービルメンさん:「電流見れば分かるよ」
恥ずかしい話ですが、ビルメン歴3年目にして初めて電流値を確認する
理由を理解した瞬間でした。
電流値
送風機にしろポンプにしろ流体を送る機器の場合、配管のダンパや弁が閉まると、
電動機は仕事をしなくなるため電流値が下がります。
空気や水といった質量のあるものを運んでこそ仕事になる訳で、
ダンパーが閉じた状態でファンを回しても、クルクル羽根が回転しているだけで
物質を運ぶという”仕事”はしていないことになります。
電気の世界で単位時間当たりの仕事は
W = I × V
で表せます。
電圧は常に一定なので、電流が低いという事は
仕事をしていない = 負荷が低い(無い)= 流体が動いていない
となり、このことからダンパーが閉まっている可能性が高いと判断できるわけです。
尚、ポンプの場合はエア嚙みを起こすと液体を運ぶ(揚水)ことが出来なくなるため
同様に電流値が下がります。
(気体は液体の1/1700の密度しかないので、圧力をかけても気体がクッションになって
液体に力が伝わりません。)
ダンパ不良の原因
外調機は基本的に1台で同系統AHU全てに外気を供給するため、とても出力の大きい
空調機となります。
比例して風量もかなり多くなるので、ダンパーの受ける圧力も相当なものになります。
ダンパが開かない原因は色々と考えられますが、私が経験した例ですと
ダンパが風の力に負けて歪んでしまったケースやダンパの軸と動力を繋ぐ金具
が緩んでしまったケースなどがありました。
外調機のダンパーは毎日稼働し、ダンパーが受ける風の力も大きく負荷が大きい為、
故障発生率は高いと思います。
まとめ
私はスーパービルメンさんに教えてもらった事例のおかげで、点検時に電流値低下を確認し
2件ほど外調機のダンパー不良を発見したことがありました。
私個人だけでも数年の間に2件も経験していますので、外調機のダンパー不良は世のビルの中で
相当数発生しているものと思われます。
過電流や漏電はブレーカーによる監視機能が働いていますが、過不足電流の警報装置は基本的に
ありませんので、設備員の目視確認だけが頼りになります。
先にも述べたように、コロナ下での換気不良は重大な責任問題になり得ますので、
昔の私のように、電流値低下の意味が解らない人は、今一度ご自身の設備の状況を確認する
事をお勧めします。
コメント